Pcik up特集

Otete to Otete

Otete to Otete

自然と人が集まり、人の輪が広がっていく。
自分にできることをやり続けることで
医療的ケア児とその家族を支えていきたい。

DATA

11歳の長男と10カ月の長女のママ。
医療的ケア児を対象にした衣服や雑貨のデザインを手掛けるほか、
当事者や家族がくつろげる場としてケアカフェを運営している。
https://vess.jp/oteteokazu/

 

医療的ケア児や母親たちが 気軽に集まり 話ができる場所へ 

病院や福祉施設、外出が困難な人の自宅へと出張で理美容サービスを提供する「VESS(ベス)」には、さまざまな人が集う。ソーシャル・グッド・マーケットの分野でデザイナーとして活躍する河西久美子さんもそのひとり。
毎週火曜日の10時から14時まで、美容室のスペースを使ってケアカフェ「Otete to Otete(おてて・と・おてて)」を運営し、オーナーとしてお客様をもてなしながら人脈を広げている。2018年6月にオープンしたときは医療的ケア児や身体障がい児、その家族の居場所づくりを目的としていたが、現在は看護師など医療従事者の利用も多く、さまざまな情報が飛び交っている。
「何かしたいけど、きっかけがわからない、○○に困っている。そんなときには、自分の経験を話すことで背中を押したり、その分野に詳しい人を紹介することで困りごとが解決したり、この場所から新しい一歩を踏み出す人もいて、ケアカフェを開いてよかったと思います」と河西さん。

カフェを開いてから長女を妊娠・出産し、現在は長女を連れて出勤している。そのせいなのか、最近では赤ちゃんを連れたママの来店も増えたという。
「美容室オーナーの長岡さんの手助けもあって、周囲の人にも支えられて、このカフェは成り立っています。
のんびりと続けることで、この地域にも医療的ケア児がいることの理解を広めていきたいです」と話す。

 

デザイナーだから できること
自分の技術を困っている 人のために

グラフィックデザイナーだった河西さんが医療的ケア児の存在を意識しはじめたのは長男の誕生がきっかけ。生まれつき病弱で入退院を繰り返していたことで小児病棟の存在を知ったという。息子よりも重い病気の子どもたちと、その子たちを見守るママたち。
「何か手助けがしたい」と、当時住んでいた札幌市の子育てボランティアとして医療型児童支援センターに通った。「患者用の衣服ではなくオシャレもしたいだろう」と、子どもたちの病状に合わせた〝着やすい服〟をつくりはじめた。
キャラクターに扮する遊びの道具としての洋服や、車イスでも着やすい服などを考えては形にしている。アイディアが浮かびデザインが決まっても縫製は素人も同然。服飾の専門学校の門を叩き、社会人コースで縫製の疑問を解決していったという。
そして、冬もお腹を出している胃ろうの子どもために考案したのが「こんにちは腹巻き」で、2017年には北海道福祉のまちづくり賞を受賞した。「自分のデザインが人の役に立ち認められる。本当にうれしかったですね」。

カフェの名前にもブランドの名前にもなっている「Otete to Otete」のロゴマークは抱っこする母子の姿をイメージしていて、「あなたの手と私の手で作るブランド」「私の手からあなたの手へ」という2つの意味が込められている。
河西さんの手から放たれたやさしい気持ちは、今日も周囲の人たちのココロを豊かにし笑顔を広げている。

河西さんが手掛ける医療的ケア児のための 衣服や帽子、靴、雑貨など